プロロジスは、業界に先駆けて日本国内で開発する原則すべての物流施設にLCA(ライフサイクルアセスメント)を導入しています。導入により、物流施設の生涯(ライフサイクル)全体で排出されるGHG排出量を算定・評価することが可能になります。LCAを「開発の標準プロセス」として定着させた背景や狙い、今後の展望について担当者に聞きました。

2050年のカーボンニュートラル実現に向け、物流分野の持続可能性と構造改革が求められています。国土交通省は、「建築物のライフサイクルカーボンの算定・評価等を促進する制度」に関する検討会を設置し、建築物LCA(ライフサイクルアセスメント)の制度化に向けた検討を進めています。

こうした中、プロロジスは日本国内で開発する原則すべての物流施設*¹において、LCA算定を開始しました。算定には、住友林業株式会社が販売する国際規格に対応したLCA算定ソフトウェア「One Click LCA」を使用。本取り組みにより、2026年、物流連が主催する「第1回 日本物流大賞」において奨励賞を、同社と共同受賞しました。物流施設の生涯(ライフサイクル)全体で排出されるGHG(温室効果ガス)排出量を定量的に把握することが可能となり、資機材選定や設計・施工の最適化によるGHG排出量の削減を実現できていることが評価されました。

制度整備を待たずに動き出したその背景と狙いとは。そして、目指すべく将来像を、プロロジスの担当者であるコンストラクション・マネジメント部 ディレクター 川畑 詠孔(えいこう)に話を聞きました。

川畑 詠孔(9654-40)
プロロジス コンストラクション・マネジメント部 ディレクター 川畑 詠孔

■ 取り組みを始めたきっかけは?

物流は社会を支える重要なインフラです。国が掲げる2050年カーボンニュートラルの実現に向けて、物流分野でもサプライチェーン全体でのGHG排出量削減が求められています。これまでは建物の運用時の省エネルギーが中心でしたが、近年は建設から解体までを含めたライフサイクル全体での排出量を把握し、評価することが重要視されています。その評価手法がライフサイクルアセスメント。通称、LCAと呼ばれるものです。国土交通省でも制度化に向けた検討が進んでいますが、物流不動産最大手である当社は業界に与えるインパクトも大きい分、先行して取り組むべきだと考えました。

■ 今回の取り組みの特長は?

LCAは、原材料の調達から建設、使用、解体まで、建物の一生にわたるCO₂排出量を定量的に評価しますが、今回は、2025年に実施した取り組みとして、3つの物流施設の建設段階(A1–A5)*2における算定結果を公表しました。原材料の採取や輸送、建材の製造、現場への運搬、そして施工に伴う排出量を算定し、建設時点でどれだけ排出しているのかを可視化しています。

最大の特長は、特定のプロジェクトだけで試験的に実施するのではなく、日本国内で開発する原則すべての物流施設にLCAを導入し、「開発の標準プロセス」として組み込んだ点が大きいと思っています。2024年12月に竣工したHAZMAT倉庫8棟からなる物流施設「プロロジスパーク古河6」以降の新規開発案件を対象にしています。

また、計画時と竣工時の2段階で算定していることも特徴といえます。まず計画時に、削減策を講じなかった場合の想定排出量を算定します。そして竣工時に、実際に資材選定や施工方法の工夫を反映した結果の排出量を算定します。基本方針として、竣工時の排出量が計画段階の標準仕様による想定値を下回ることを目指しており、建設段階で10%削減することを目標に掲げています。

■ どのような成果が出ているか?

2025年の取り組みでは、「プロロジスパーク古河6」で17%の削減を達成しました。「プロロジスパーク八千代2」では6%、「プロロジスパーク岡山」では10%の削減です。特に古河6では目標を大きく上回る結果となりました。

2026年においては、「プロロジスパーク古河7」や、「プロロジスパーク豊中」などの算定結果が出る予定です。

プロロジスパーク古河6
竣工:2024年12月

プロロジスパーク八千代2
竣工:2025年4月

プロロジスパーク岡山
竣工:2025年9月

プロロジスパーク古河6(全体外観|6436)
プロロジスパーク八千代2(外観|6436)
プロロジスパーク岡山(外観|6436-30)

▲17%

▲6%

▲10%

■ 進めるうえで苦労した点は?

一番難しかったのは、環境性能と経済合理性の両立です。排出量削減を優先すれば建設コストが上昇する可能性があります。短期的なコスト増と、中長期的な環境価値や競争力向上とのバランスをどう示すかが大きな課題でした。

そこで、LCAの算定結果を基に、コストと環境性能の両立を意識した仕様改善を進めています。例えば、建物基礎部に高炉B種セメント*³を採用したり、施設外周部のコンクリート構造物をプレキャスト化*⁴したりすることで、品質や性能を維持しながらGHG排出量の削減を図っています。また、新しい技術や高付加価値資材を無条件に採用するのではなく、既存仕様の見直しや調達方法の工夫によって、追加コストを抑えながら排出量削減を進めています。効果が確認できた施策は標準設計に組み込み、継続的に改善できる体制も整えました。

■ この取り組みの意義は?

本取り組みは、弊社が掲げる「2040年までのネットゼロ達成」という長期目標とも連動しています。さらに、弊社の物流施設を利用するカスタマーのスコープ3*⁵排出量削減にも貢献できます。つまり、物流施設単体の話にとどまらず、サプライチェーン全体の環境効率向上につながる取り組みになっているのです。物流業界全体の脱炭素化を加速させる一助になれば幸いです。

ネットゼロ(タイムライン|1152)

■ 今後の展望は?

LCAの結果を活用し、物流施設における環境評価手法の高度化と標準化をさらに進めていきます。制度が整う前から実践を重ねることで、日本の物流施設開発の新たなスタンダードを築いていければと考えています。


*1「プロロジスアーバン東京錦糸町1」は2025年竣工物件であるが、共同事業であることなどを理由に算定対象としていない。

*2 建築物のライフサイクルアセスメント(LCA)において用いられる区分

A1:建材の原材料を採取・調達する段階での排出
A2:原材料を採取地から建材の製造工場まで輸送する際の排出
A3:原材料を加工し、建材や建設部材として製造する工程での排出
A4:建材・部材を施工現場まで運搬する際の排出
A5:建設現場での施工に伴う排出

*3 セメントに、製鉄の副産物である高炉スラグ(溶鉱炉スラグ)を混ぜたもの。環境に優しい一方、固まるのに時間がかかる。

*4 建物の構造部材をあらかじめ工場で製作し、現場ではそれを組み立てる工法

*5 スコープ3は、原材料の調達から最終的な廃棄に至るまでの一連の流れにおいて発生するGHGのうち、自社が直接排出する分(スコープ1)やエネルギー使用に伴う間接排出(スコープ2)を除いた部分を指す。